こんにちは!Onogamesです。
今回の記事は、バンコクTCGショップオーナーシャニンさんが書いて下さりました。
題名の通りナショナルズ2018の記事となります。
原稿を頂いた際にナショナルズ?となりましたが国別選手権の事なんですね。
以前の記事でも触れられておりましたが、タイナショナルズ2018はシャニンさんのショップ主催で開催されたようです。
それでは、シャニンさんの記事を楽しみ下さい!
はじめに
皆さんこんにちは!シャニンがまたもや登場です。
また皆さんと話す機会を得られた事を非常に嬉しく思います。題名と本記事の主題であるタイナショナルズ2018はしばらく前に終わっていたのですが、仕事がべらぼうに忙しく今の時期に記事を上げることになってしまいました。※Onogemes記事担当者の翻訳編集も少し遅くなってしまいました。申し訳ございません。
ビッグイベントの直後に仕事の出張で、海外へ行かなくてはいけなかったのです。行先が日本で、Onogamesのメンバー達と食事をする機会があったのは不幸中の幸いでした(笑)
何はともあれ、今回のナショナルズ運営におけるオーガナイザーとしての経験について報告(というよりはお話し)させていただきます。それはとても楽しく、忘れられない思い出でです。前置きを長くとってしまうのは私の癖ですね(笑)それでは、皆さんの時間を無駄にしないよう、本題へ移ります!
Wizardsからの依頼とタイナショナルズ2018への抱負
2月、Wizardsから私に連絡がありました。「タイナショナルズの運営に興味があるか?」と。私の返事は「もちろん!」。何のためらいも無く回答いたしました。私はMTGのイベントを運営することが大好きですから、このようなチャンスを棒に振るわけにはいかないのです(笑)
私が投稿させていただいた最初の記事にもあるように、昨年のタイナショナルズ2017も運営させていただきました。幸いにもこのイベントの悪い評価を耳にすることはありませんでした。
しかし、振り返ってみると、私がコミュニティの為に上手く出来た、貢献できたと思っていた事象や性質はナショナルズというイベントに元から含まれていたものでした。
また、タイナショナルズ2017はタイで初めてのナショナルズであり、同じく初めてWizards以外が主催した大型大会であったため、優しいタイ人から責められなかったのでしょう(笑)※タイは微笑みの国と呼ばれています。
初めての事象で全てを完璧にすることは難しいです。そのため、私はナショナルズ2017の反省を生かし、ナショナルズ2018をより良いものとしたいと考えました。
そこで立てた最初期の目標が「誰しもが楽しめるイベントにする」です。
開催に向けて-舞台裏-
正直な私の感想としては、ナショナルズ2017は競技MTGに特化しすぎており、カジュアルプレイヤー向きではありませんでした。タイ初の全国大会であるこのイベントで、本来であればすべてのプレイヤーが開催を祝い、大会を楽しむことが望まれます。しかし、この事実は参加者をタイのMTGプレイヤーのほんの一部に制限してしまいました。
私はナショナルズ2018をナショナルズの競技的な面をなるべく残し、年に1度開催されるMTGのお祭りにしたいと強く思いました。
必要な項目をまとめると
-参加プレイヤーを増やす
-参加費を安くする
-他のショップによる協賛
-誰もがアクセスしやすい会場を準備する
これらを念頭に置いて、私は入場料を900バーツに引き下げることから始めました。これは昨年の1,200バーツより大幅に低いです(1バーツ=3.4円くらい)。心理的にも、一桁下がると人々はかなり低いと思うでしょう。
また、プレイヤーの事前登録を手伝ってくれた店舗へ1人頭100バーツを返却するという試みも行いました。「100バーツ・サポート・プログラム」とでも呼びましょうか。タイでは、大きな大会の参加者登録を他のショップが助けることが伝統となっています。1つのショップが全てのプレイヤーへアクセスすることは非常に困難なため他のショップの助けを得ることは非常に有効です。
しかし、私はこれまでに手を貸してくれたショップが何かを得なければならないと感じていました。また、ナショナルズ2018の利益は、主催の私だけでなく、タイMTGコミュニティの為にあるべきです。これが「100バーツ・サポート・プログラム」の考え方を考え出した理由です。
店はプレイヤーから900バーツを徴収しますが、主催へは800バーツを支払うだけです。 これにより、他のすべてのショップオーナーは、純粋な善意の助けではなく、このイベントの一部、つまり協賛となるわけです。
会場の選定でも悩みました。最終候補は2つ。「駐車場があるが駅から遠い会場」と「駅から近いが駐車場が少ない会場」です。どちらも良い立地のためレンタル費用は高め(涙)
最終的にはプレイヤーが好むだろうという事で「駅から近いが駐車場が少ない会場」を選択しました。
「100バーツ・サポート・プログラム」、「アクセスのよい会場」これらの制約があり、イベントの収入が大幅に少なくなったため、イベントを最小限に抑えることとしました。これは、費用の問題だけでなく、最小限のツールでどれくらいの費用が掛かるかを実際に知りたかったという思いもありました。今後ナショナルズ規模の大会を開く上での知見が欲しかったのです。後のセクションで見ることのできるイベントの写真から、このイベントにはほとんど装飾がないことがわかります。
ナショナルズのスローガン
これまでの取り組みである「参加費を安く」、「他のショップによる協賛」、「アクセスのよい会場」これを達成したからと言って参加者が本当に来てくれるでしょうか?私は何か大きなコミュニティ共通の目標が必要だと感じました。そこで私が掲げたスローガンが「タイをMTG先進国にしよう!」です。
MTGの超先進国である日本人の皆様は首をかしげるかもしれません。しかし私達MTG後進国にはこれから登らなくてはいけない壁があるのです。沢山のはしごも必要ですね(笑)
ナショナルズ自体にも差があります。参加のためのPWPは200で十分です。私達のトーナメントはスタンダード5回戦+ドラフト3回戦ですが、あなた達のトーナメントはスタンダード4回戦+ドラフト3回戦+ドラフト3回戦+スタンダード2回戦です。過酷です(驚)
GPの開催されない私達の国では本当に大きな大会が数えるほども無いのです。プレイヤー達も機会に飢えています。MTG先進国になることで得られるものは皆さんの想像を超えたものなのです。
そんな大きな目標の為に私達は200人の参加を目指しました。プレイヤー、各ショップのオーナー、タイのMTGコミュニティが高い目標のために一丸となりました。新しい試みを含め、沢山のタスクが降り注いできましたが、幸いにもそれらが功を奏したのです。
タイナショナルズ2018の参加者は222人にも及びました!!!!
前年度の30%増しです。私個人な試算は4%増しでしたが、それを大幅に超えました。
まったくもって狂気的な人数です…しかし、最高にハッピーな狂気でした(笑)
ジャッジ探し
早い段階である程度の人数が見込めたため、ジャッジとスタッフの準備に取り掛かりました。残念ですが、その時点では積極的なジャッジがほとんど見つかりません。私は過去の経験から、ジャッジ不足になることは見通すことが出来たので、自分自身をジャッジの頭数に入れ、スコアキーパーにあてました。その時点では私はそれが最高のアイディアだと思ったのです。スコアキーパーと主催の仕事を同時にできると考えたのですが、非常に悪い考えでした…。(この件については後ほど説明します)
またそれに合わせて、このイベントに向けて2名のスタッフを雇う事としました。従来のスタッフ、新しいスタッフ含め全員で徹底的に訓練とロールプレイングを行いました。この取り組みをしておいて本当に良かったです。素晴らしいアイディアであったと自分をほめたいです。忙しい時に私のところに何度も来られていたら今頃正気を保てていなかったでしょう。ヒント…スコアキーパー
結局私を含め7人のジャッジでイベントをこなす事に(涙)追い打ちをかける様に悲劇が訪れます。イベントの1週間前にヘッドジャッジを変更するという事態が起きました。
また、レベル2ジャッジの内の1人はもとより友人の結婚式の後にチェンマイからバンコクへ飛行機で駆け付ける予定でしたので最も忙しい最初の数回戦を6人のジャッジで回すことになったのです。
Wizards Event Reporterへの苦い恋
私達はまだこれほどまでに大きなイベントを行ったことが無かったため、中規模大会でもWizards Event Reporter (以下、WER)を使用していました。これはほぼすべてのショップで使用されている物と同じプログラムです。悪いニュースはこのプログラムが混合フォーマットのイベントで使用するための物ではなかったことです。したがってイベント成功の為、様々な方法を知る必要がありました。
このイベントのためのWER操作マニュアルを受け取ったとき、私は初めてそれがどのような作業になるかを正確に知ることになります。マニュアルの長さは30ページ以上にもなり、多くのステップは全く新しいものでした。 結局、私はそれを使用して練習を行います。モックアップイベントでのシミュレーションでは開催日の2日前にやっと納得のいく結果を得ることが出来ました。これによりどのステップに多くの時間がかかるかを知ることができ、事前にいくつかのファイルを準備することができました。
このWERプログラムは、スタンダード→ドラフトの様にフォーマットの変更を自動的に行うことが出来ません。 手動でモードを変更し、各プレイヤーをポッドに手入力で割り振らなくてはなりませんでした。 お気づきの通り、その日に私は100人以上のプレイヤーを各ポッドへ手入力で割り振りました。 多くの選手がトーナメントからドロップしていたことをとても嬉しく思ってしまいました(爆)※タイ人は名前が驚くほど長いので本当に大変そうです。長すぎて職場でも親が付けたニックネームを使用します。ここでも使用するのでしょうか?
手動で200人以上の選手を割り振っていてはさらに時間がかかった事でしょう。しかし、タイナショナルズは14ラウンド形式に移行します。そのため来年は努力だけで運営する事は難しいでしょう。 WLTR(Wizards Large Tournament Reporter)を代わりに使用することに期待しています。
(本当はWERやそのマニュアルを写真で見せたかったのですが、機密事項にあたるため出来ませんでしたOTL)
タイナショナルズ2018当日
この日は私が非常に多くのことを学んだ日です。50-70人規模の大会と220人規模の大会を運営することは全く違いました。選手の登録、プロモーションカード等の手配、賞品の授与など、すべてに時間がかかります。それだけでなく、場所の確保や物流の管理も考慮する必要があります。ヘッドジャッジと私は、ヘッドジャッジの挨拶中にプロモーションカードを配るのはプレイヤーの気を散らすので、代わりにラウンド1の最後にプロモーションカード配る事にしました。 それは悲惨な決定でした。 受け取りの為に各プレイヤーをチェックするには非常に時間がかかり、列は15-20mとなっていました。 我々は、この計画をキャンセルし、イベントの遅れを防ぐために、後のラウンドで再び参加するようにプレイヤー達へお願いしました。これは、50-70人規模の大会と200人規模の大会との大きな違いの代表的な例の1つです。
その後、ようやくスコアキーパーとしての仕事に集中します。私はスコアキーパーの経験がそこそこありましたのでうまくいくと思っていました。が、全く違いました!!!!
200人以上のプレイヤーのスコアを入力することは本当に長い時間がかかり、多くの注意を払う必要がありました。入力ミスを恐れ、10-15分大会を伸ばすか、勢いに任せ入力するか….あなたはどちらを選びますか?
さらに、ラウンドの終了手続きに予想以上の時間がかかりました。そしてさらに、多くのコントロールデッキをプレイヤーが選択しており、多くのマッチで追加ターンが発生しました。
結果として、スコアキーパーの仕事に個人の時間の75%を割いてしまい、残りの25%しかオーガナイザーの仕事に費やすことが出来ませんでした。これが、私がイベント前にスタッフを訓練したことが素晴らしいアイディアだと述べた理由です(涙)
私がスコアキーパーとオーガナイザーの仕事を同時に行う事は金輪際ないと断言します。
もう一度ナショナルズのオーガナイザーを務める機会があればフロアジャッジとの兼任かもっと自分自身が許容できる他の仕事を請け負うでしょう。
ここまで多くの苦情を自分自身で発してきましたが、イベントは非常にスムーズに運営できました。ジャッジやスタッフのおかげでイベントを遅らせる事無く問題を小さなうちに克服することが出来たのが非常に大きかったです。
正直な話、参加者の方からは様々な評価があるかと思いますが、今回はオーガナイザーの視点から総括を行いたいと思います。そのために以下の事に焦点を当てました。
-小規模での運営
-ジャッジの人数
-222人という参加者
-参加者のニーズ
-イベント中に起きた軽微な問題
これ等を踏まえて、私はタイナショナルズ2018を「成功」と評価します。今回、小規模運営での開催という実績は次回以降大会の規模を大きくできる可能性を示唆しています。それはオーガナイザーにとってとても良い材料です。もっとも私が次回も主催出来ればの話ですが(笑)
最後に、イベントでマッサージを行うという発想を与えてくれた晴れる屋さんに感謝します。参加者に何か貢献したいと常に悩んでいました。マッサージは本当に良いアイディアだと思います!
メタゲーム
このイベントはMTGのトーナメントですので、運営の話ばかりではなく、メタゲームについても簡単に話しましょう。すでに1ヵ月以上経過しておりますが、その間に新しいセットは発売されていませんのでメタゲームは現在とそこまでかけ離れていません。1つ問題点を挙げるなら、このイベントがM19発売の2週間後に行われた点でしょうか。そんな不安定なメタゲームの中開催されました。私は参加できませんでしたが、見ているだけで楽しそうでした。※シャニンさんはファンデッキが大好きです。
プレイヤーの内何人かの人々は新しいデッキを試してみたいと思っています。そう、彼らは非常にユニークなものを発見し、トーナメントを征服したいと思っています。残念ながら、それは今回達成されませんでしたけどね(笑)
トーナメントを支配したデッキは、若干のアップグレードはあったもののM19以前のデッキと同様でした。
とはいえ、この環境のスタンダードは非常に多様だと考えています。《ゴブリンの鎖回し》を使用したデッキは《ドミナリアの英雄、テフェリー》を有するコントロールデッキと並んでメタゲームを作り出していますが、その種類は多岐にわたっています。
以下のデッキがこのトーナメントの上位入賞者の使用したものです。
-赤黒アグロ
-青白コントロール
-赤緑モンスター
-青白王神
-緑単ストンピィ
-白黒ベナリア史
-ティムールランプ
-グリクシスミッドレンジ/ドラゴン
-グリクシスコントロール
-青黒/青赤ミラーリ
Top 8 Deck Listを見れば、メタゲームの多様性がはっきりと分かります。詳細は以下のリンクからどうぞ。
http://mtgbangkok.com/blog/thailand-nationals-top-8-decklists/
トップ8リストには合計6つのアーキタイプがあり、メタゲームをより楽しい物としてくれました。このイベントに多様性を生み出したもう1つの理由は、多くのカジュアルプレイヤーが参加したことだと考えています。低い参加費と全国のショップから登録できるシステムはカジュアルプレイヤーの増加に一役買いました。タイナショナルズは、タイの王者を決める大会というよりは年に1度の大きな祝典とみなされたのでしょう。
肝心のトーナメントはBWベナリア史によって征服されました。騎士の群れは《黎明をもたらす者ライラ》共にすべての対戦相手を倒し、トーナメントを終わらせました。
タイメタゲーム小話
もしあなたが、「このイベントで最も人口の多いデッキは何ですか?」と尋ねるならば私は「UWコントロールだ」と自信を持って答えることができます。 タイのプレイヤーは、タイのプレイヤーの多くがコントロールデッキを愛用していることを常に意識しています。
それを象徴するフレーズがタイMTGコミュニティには存在します。”คนไทยหัวใจคอนโทรล“(Kon Thai Huajai Control)意味は「Thai Player-Control at Heart」といったところでしょうか?よってタイのトーナメントは追加ターンが多いです(涙)もし、タイでMTGをプレイするならそれを頭に置いておいて頂けたら幸いです。
タイナショナルズ2018写真館
※実はタイにも晴れる屋ホープスの方がいらっしゃいます。先日のRPTQを勝利されPTの権利を得たそうです。
さらに多くの写真を以下のリンクより見ることが出来ます。
https://1drv.ms/f/s!AhazYtMb0WwRh6Irg2EAfMB-vvcVuA
この記事を読んでくださった方の多くは退屈だったのではないでしょうか?イベントの舞台裏の話が主ですので、多くの読者の方には役に立たない情報ばかりだったはずです。このようなイベントを企画する方は限られていますし、日本は既に大きなイベントに精通しています。ある程度確信をもって書きました。申し訳ございません。
この記事で私たちの国が大きなチャレンジをしていることを知っていただけたら本当に嬉しいです。ここまで読んでくださってありがとうございました。
私は次回に「あなたがタイを訪れるなら何をしたいですか?」と書くつもりです。 特定のことについて読んでみたいことがあれば教えてください。私は情報を収集するために最善を尽くします。
再度、あなたが私に連絡したいのであれば、ここに私の連絡先情報があります。 常に新しい友達を歓迎します!
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